妊婦が新型コロナウイルスに感染するとインフルエンザ等他のウイルス感染症と同様に
重症化しやすくなります。そのため世界中で多数の妊娠中または感染後に妊娠が判明した
方(妊娠の可能性のある方)にコロナワクチンが接種されていますが、副反応は軽微であ
り、妊婦及び胎児さらには新生児への悪影響が認められず、効果のメリットがはるかに優
れていることが確認されています。副反応としての不妊については、ネット上で飛び交う
情報は明らかな誤報であり、不妊の原因とはなりません。
ワクチンは大別してウイルス等の病原体を弱毒化した生ワクチンと不活化ワクチンに大
別されます。
前者は体内で増殖したのちに免疫が獲得され感染が予防されますので、病原性が弱めら
れていますが、ワクチン株により発症する場合があり、妊娠中または妊娠の可能性のある
人への接種は控えられます。
一方後者の不活化はウイルスの一部を利用して免疫が獲得されますので、ワクチンの成
分に対する副反応の可能性はありますが、実際に発症することはありません。新型コロナ
ワクチンで現在使用されているものは、広い意味で不活化に属し、妊娠中の使用に問題は
ありません。
インフルエンザワクチンも不活化ですので、上記新型コロナワクチンと同様に接種可能
です。
妊娠中のワクチン接種は不活化百日咳ワクチン(破傷風・ジフテリアを合わせた3種混合
として接種)でも世界では推奨されています。妊婦の体内で産生された抗体が、胎盤を通
じて新生児に移行し、新生児の百日咳の予防に役立ちます。世界で使用されているワクチ
ンは百日咳の量を減少された製品であり、妊婦への接種の安全性が確認されています。し
かし日本では含有量が多い製品のみ認可されており、成人への接種は認められていますが
妊婦への接種は検討されていません。しかし成人で問題ありませんので、納得いただけれ
ば接種をお勧めいたします。
新型コロナ・インフルワクチンも産生された抗体が新生児に移行し、、新生児の感染防
止に役立ちます。
生ワクチンである麻疹、風疹、水痘は1歳からの接種が行われているのは、母より移行し
た抗体が消失し、ワクチン株の増殖が阻害されなくなるまで1年を要するからです。実際
に1歳前の接種は効果が減少することが確かめられています。
しかし1歳前から保育園等集団生活による感染予防として、状況次第で1歳前の接種も勧
められます。しかし、効果は限定されますので、1歳以降の通常の定期接種をしてくださ
い。2023年春より日本でも麻疹が増加しつつあります。状況によっては検討される必要が
でてくるかもしれません。
MR(麻疹・風疹)ワクチンは年長児(小学校入学の1年前より開始)に2回目接種が必
要ですが、共に流行期は春先ですので、4月になったら出来るだけ早期の接種をお勧めし
ます。
2021年10月21日
2023年6月6日改定
医療法人社団船橋ベイサイド小児科
院長 佐藤武幸

船橋ベイサイド小児科