HPV(ヒトパピローマワクチン)は200種ほどの型があり、尖圭コンジローマ・鼻咽頭
パピローマの原因となる6および11型等の低リスク型と、20種ほどの子宮頸がん・咽頭が
ん・喉頭がんの原因となる16および18型等の高リスク型に分類されます。2価ワクチン(
サーバリックス)は16型と18型のみ、4価ワクチン(ガーダシル)はさらに6型と11型が加
えられています。最新に認可された9価ワクチン(シルガード)は4価ワクチンに更に5種
の高リスク型が加わり高リスク型が7種に増えました。全て性行為(口腔ではデイープキ
ス)を介して感染し、日常生活で感染することは極めて稀です。
HPVワクチンは、含有型についてはほぼ100%有効と推定されますが、その他の型につ
いてはほとんど無効です。子宮頸がんでは原因の70%は16と18型ですので、4価ワクチン
については70%の人には有効ですが、残りの30%の人には効果ありません。9価ワクチン
では高リスクが7種に増えた為、90%の人に有効となりましたが、それでも10%の人には
無効です。
ワクチンはウイルスの外側の殻のみからなり、感染力はありません。日本では子宮頸が
んにより年に3000人弱が死亡しており、ワクチンの効果は世界的に確認されています。
ワクチンではカバーできない人へは、性行為に関する健康教育子宮頸がん検診(20歳
より公費で可能)が重要となります。

ワクチン対象者
ワクチンは既に感染した型には無効ですので、感染リスクのない若年者が対象であり、
小学6年生から高校1年生相当の女性が公費で無料接種できます。
性交渉経験者でも、未感染の型には有効であり、公費対象者以外にも希望者には接種が
勧められます。
20歳になると公費での子宮頸がん検診を受けられます。早期発見・治療により妊娠出産
も可能となりますので忘れないで下さい。
臨時処置として、1997年4月2日~2007年4月1日生まれ女性で定期接種(無料)を逃した
方も2025年3月末まで無料で接種できます。
世界では男性も無料接種の対象となっている国もあります。男性にも発症する咽頭・喉
頭がん、陰茎がん、直腸がん等の予防、および女性への感染伝播予防として有用です。
当院では9価(シルガード)をお勧めしています。初回、2回目を9価以外のワクチンで受
けられた方も残りを9価に変更できます。
9価ワクチンは15歳未満の人は2回接種、15歳以上は3回接種です。接種後10年程度有効
とされていますが、それ以上の有効の可能性も推察されており、今後新しいデーターが示
されると思われます。

副反応
積極的勧奨中止の原因となった慢性疼痛は、その後未接種者での発症頻度と差がなく
、HPVワクチンに特有の副反応ではないことが分かりました。失神や一時的不調も他のワ
クチンと同様に血管迷走神経反射が原因です。しかし接種時の痛みや不安が発端となって
おり、副反応はゼロではありません。筆者は利益の方がはるかに多いと接種をお勧めしま
すが、不利益の存在も御理解ください。
2022年2月6日
医療法人社団 船橋ベイサイド小児科
院長 佐藤武幸

船橋ベイサイド小児科